春蘭、寒蘭のメリクローンについて私の知っている限り
書いてみたいと思います。解らないことや質問も受け付けします。
コメントくだされば出来る限り返事したいと思います。
富貴蘭に付いては性質が違いますから後日にしたいとおもいます。
ちなみに私は春蘭、寒蘭のメリクローンはしたことはありませんし
することもできません。
専門ではありませんから間違いもあるかもしれません。
クローンとは簡単に言えば植物体の一部から植物を復元して同じ
個体を作り出すことです。挿し芽、挿し木、が一般的です。
全国で同じ桜のソメイヨシノが見られるのはクローンにより増やすことが
できるからです。動物と違い植物の多くは切り口より簡単に万能細胞である
カルスを発生し易いので比較的簡単にクローンを作ることが出来ます。
全ての植物は基本的にクローンにより増やすことができます。
春蘭、寒蘭はどうでしょうか、挿し芽、挿し木、葉挿しはできません。
これは春蘭寒蘭が傷口に簡単にカルスを発生しないためです。
ですからバイオ技術によりメリクローンするしかありません。
業界の中でこの話をして感じることはメリクローンと交配種蒔き
を混同している方が多いことです。同じ瓶の中でのことですから
無理もありませんが全く意味が違います。
春蘭柄物、秩父錦の生長点培養によるクローン個体です。
研究用に栽培しています。
原種株分け個体と全く同じ遺伝子で秩父錦そのものです。
寝ている葉は瓶の中で展開した葉です。
メリクローンによる大量培養は園芸界にとって喜ばしい技術です。
安定した品質の良い個体が大量培養出来れば生産者も消費者も
良いに決まっています。
東洋蘭ではどうでしょうか?
高額な商品全てがメリクローンされ暴落すれば業界として
成り立たなくなります。
実際、春蘭寒蘭はメリクローン出来るのでしょうか?
写真の秩父錦のように技術的には可能です。
しかし柄物の縞や中透けは柄抜けや成長に問題があり
かなり難しくなります。
ずいぶん前に高額品をメリクローンで増やすことを考えてみました。
取りかかって苗を得るまでに最短3年、
そこから商品にするまで数年(商品になってもまだまだ小木)
高級品の新芽を切り取り成功したにしても商品になった時に
まだその蘭が高価とは限りません。高価だったとしても売り出した時に
暴落することは見え見えです。
どんなに考えても経費を掛けてまですることではないと思いました。
春蘭寒蘭生長点培養のステージ
まず新芽が形成され大きくなった段階で切り取り
無菌状態で生長点を取り出し培地に移植します。
生長点がショウガ根に移行します。
通常の植物は万能細胞のカルスを経由して
植物体になりますが春蘭寒蘭はカルスの替わりに
ショウガ根を経由します。
言葉では簡単のようですが、ホルモンのバランス、温度など
かなりのテストと研究が必要になります。
研究しても枯れ死する率はかなり多いと思います。
柄物のような弱い品種は枯れる確率が高くなります。
ショウガ根が成長して分裂しながら増えますが
縞や中透けはこの段階で
柄抜けすることも多くなります。
柄の継続は不安定です。
写真の秩父錦もショウガ根成長段階でかなり柄抜けして
黒の芽が出てきます。
ショウガ根を切って増やせば大量に同じ個体を
得る事ができます。
種蒔きで実生を作ってもショウガ根を経由しますから
大量に同じ個体を得る事が出来ます。
花物は花を見たことの無い個体を大量に得ても
意味がありませんから通常は枯れ死を考えて
同じショウガ根から数本取って後は捨てます。
種蒔きによる春蘭培養。
同じショウガ根からの発芽個体は全て同じクローンです。
発芽した芽を植えた瓶です。
全て同じ個体です。数本取って後は捨てます。
生長点より2年以上でショウガ根より葉が展開します。
根が少し出た段階で新しい培地に移植して
大きくして取り出し植え込み順化させます。
瓶出し苗は無菌状態で成長したせいか病気の感染に
弱くある程度の枯れ死は覚悟しないといけません。
全てのことを考えて高価な蘭の新芽を切り取り生長点培養で
メリクローンする方がいたなら恐れ入ります。
自然と野生ラン原稿執筆より頑張りました(笑)